2分で読める生成AIのいま Vol.44国内事例④:大阪府庁の職員が「AIを使い続けたい」理由
企業だけでなく、行政の現場にも生成AIの波が広がっています。
大阪府は2023年11月、自治体の中でも先駆けて全庁規模で生成AIの試験活用を開始しました。使われたのはMicrosoftの「Bing Chat Enterprise」(現在のMicrosoft Copilot)。
導入後のアンケートでは、利用者の約9割が「引き続き利用したい」と回答したそうです。
なぜ、行政の現場でこれほどAIが受け入れられたのか?
【この記事のポイント】
・大阪府が全庁規模でBing Chat Enterprise(現Microsoft Copilot)を試験導入し、職員に広く浸透
・議事録の要約やあいさつ文の案出しなど、正確さと丁寧さが求められる業務でAIが威力を発揮
・職員の業務効率化は、巡り巡って府民サービスの向上につながる
今回も医療田さんと機械屋さんの会話でどうぞ。
※Vol.39 パナソニック → Vol.41 JAL → Vol.42 ソフトバンクホークスに続く、国内AI活用事例シリーズ④です。
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● 行政の現場にもAIの波
医療田:
ねえ機械屋さん。
国内AI活用シリーズ、今回はどこの話?
機械屋:
今回は「大阪府」です。
パナソニック、JAL、ソフトバンクホークスと民間企業が続きましたが、、
いよいよ行政の現場にもAI活用の波が来ているんです。
医療田:
おお、自治体!
たしかに行政って膨大な文書を扱うイメージあるから、AIとは相性よさそうだよね。
で、具体的にどういうツールを入れたの?
機械屋:
大阪府は2023年11月から、Microsoftの「Bing Chat Enterprise」を全庁規模で試験導入しました。
今でいう「Microsoft Copilot」ですね。
全職員を対象に、会議内容の要約やホームページの外国語版の作成などの業務で活用を始めたんです。
医療田:
ああ、Copilot、うちの病院でも導入されてるなあ。
機械屋:
おお、そうなんですね。
CopilotはAzureと並んでMicrosoftが提供する生成AIですね。
WordやExcel、Teamsなどの業務アプリに組み込まれていて、文書の要約や下書き作成、データ分析などを自然言語で指示できるのが特徴です。
そして、Copilot(当時はBing Chat Enterprise)の裏側にも、Azureシリーズ(Vol.35〜38)で紹介したAzure OpenAI Serviceの技術が使われています。
医療田:
あ、つながった。。!
機械屋:
実はその導入に先立って、2023年9月に大阪府と日本マイクロソフトが「AI利活用に関する事業連携協定」を締結しているんです。
スマートシティ大阪の実現に向けた、いわばパートナーシップですね。
● 利用者の約9割が「使い続けたい」
医療田:
でもさ、新しいツールって、どの業界でも「導入したけど結局使われなかった」っていう話が多いよね。。
実際のところどうなの?
機械屋:
そこがすごいんですが、、
試験導入後のアンケートに約3,000人の職員が回答して、利用者の約9割が「引き続き利用したい」と答えたそうなんです。
医療田:
9割、、! それはかなり高いね。
新しいシステムって、最初だけ使って終わり、、ってなりがちなのに。
機械屋:
シンプルに「便利だから」なんですよね。
たとえば、議事録の要約。
会議のあとに長い時間かけて議事録をまとめていたのが、AIに渡すと数分で要約が出てくる。
医療田:
あー、、! それは嬉しいだろうね。
私も病院のカンファレンスの議事録、回ってくるたびに「長い。。」って思うもん 笑
機械屋:
ですよね。
他にも、あいさつ文の案出し、アイデアの整理、住民向け文書の言い回し調整、国からの通達を各市町村向けにかみ砕いた文書にする作業、、
行政ならではの「正確さと丁寧さが求められる」作業で、AIが力を発揮しているんです。
医療田:
あいさつ文! あれって毎回似たようなこと書くのに、微妙に違ってないといけないやつだよね。。
機械屋:
まさにそうなんです。
行政の文書って、正確さと丁寧さが命ですから、推敲にどうしても時間がかかる。
そこをAIが「たたき台」を出してくれるだけで、作業時間が劇的に短縮される。
一度その便利さを知ってしまったら、もう手放せないんでしょうね。
医療田:
わかるなー。。
私もChatGPT使い始めた頃、「なんで今まで全部自分で書いてたんだろう」って思ったもん。
● 府民にとっての意味
医療田:
でもさ、職員さんが効率化するのはいいことだけど、、
私たち住民にとってはどうなの?
機械屋:
大いに関係があります。
ここが大事なポイントでして、、
職員が事務作業にかける時間が減れば、その分、住民の相談に乗ったり、新しい施策を考えたり、現場に足を運んだりする時間が増えるわけです。
医療田:
あ、、なるほど。
事務作業が効率化されることで、「本来の仕事に集中できるようになる」ってことか。
機械屋:
おっしゃる通りです。
それに、行政文書がわかりやすくなったり、手続きのレスポンスが早くなったり、、
府民サービスの質そのものが向上する可能性がある。
医療田:
うちの病院でもさ、カルテの入力を効率化して、その分患者さんと話す時間を増やそう、っていう話はずっとあるんだよね。
同じ構図だ。。
機械屋:
まさに同じですね。
しかも大阪府の取り組みはそれだけじゃないんです。
高齢者向けのLINE公式アカウント「おおさか楽なび」には、TIS社の「Dialog Play」とAzure OpenAI Serviceを連携させた生成AIチャット機能が搭載されていて、、
高齢者の孤立対策にもAIが活用されているんです。
医療田:
え、高齢者向けにも!
それは面白いね。。LINEなら高齢者の方にも使いやすいし。
機械屋:
ええ。
庁内業務の効率化だけでなく、府民向けサービスにもAIを展開している。
そこが大阪府の取り組みの幅広さですね。
● 「使われるAI」と「使われないAI」の差
医療田:
でもさ、ITツールって、どの業界でも「導入したけど使われてない」っていう話をよく聞くよね。
大阪府はなんで上手くいってるの?
機械屋:
いい質問ですね。
ここが一番大事なところかもしれません。
ポイントは「現場の声を聞いた」ことだと思います。
医療田:
現場の声?
機械屋:
ええ。
AIツールを導入する際に、「こう使え」と上から押し付けるのではなく、、
「どんな業務で困っているか」をヒアリングして、その困りごとに合う形でツールを提供した。
実際、大阪府では事務局が利用部署に出向いて活用事例のインタビュー記事を作成し、庁内サイトで紹介するなど、利用を広げるための地道な取り組みもしているんです。
医療田:
あー、、それ大事だよね。。
うちの病院でも、誰も使わないシステムって、だいたい「現場を知らない人が決めたやつ」だもん。
機械屋:
ははは。。どこも同じですね。
結局、AIは「魔法の杖」じゃなくて「便利な道具」なんです。
道具は、使う人が「これ欲しかった!」と思えて初めて定着する。
大阪府はそこをきちんと押さえたからこそ、利用者の9割が「使い続けたい」と思えるAI環境を作れたんでしょうね。
● そしてAIエージェントへ
医療田:
ところで、大阪府のAI活用ってこれからどうなるの?
機械屋:
実は2025年9月、大阪府と日本マイクロソフトが新たな取り組みを発表しました。
「行政特化AIエージェント」の開発です。
医療田:
AIエージェント!
Vol.43でやったCoworkの話に近いやつだ。
機械屋:
まさにその系譜ですね。
行政案内や相談対応、多言語対応などにAIエージェントを試験導入する予定で、、
将来的には住民の声をリアルタイムで集めて施策を検討する仕組みも想定しているそうです。
「AIエージェント実証コンソーシアム」も立ち上がる予定です。
医療田:
すごいなー。。
チャットツールの試験導入から始まって、2年でAIエージェントまで進化してるんだ。
機械屋:
そうなんです。
しかも大阪府は2024年6月にはGoogleとも連携して、生成AIによる雇用ミスマッチの緩和にも取り組んでいます。
Microsoft、Google、、パートナーを使い分けながらAI活用を加速させている。
医療田:
なるほどね。。
1社だけに頼るんじゃなくて、目的に合わせてパートナーを選んでいるわけか。
● 今回の教訓
機械屋:
では、今回の教訓をまとめましょうか:
・大阪府は2023年11月からBing Chat Enterprise(現Microsoft Copilot)を全庁規模で試験導入し、利用者の約9割が「使い続けたい」と回答。
・議事録の要約、あいさつ文の案出し、文書のかみ砕きなど、「正確さと丁寧さが求められる」行政業務でAIが威力を発揮。
・職員の業務効率化は、府民サービスの質の向上に直結する。
・高齢者向けLINE「おおさか楽なび」にAzure OpenAI Service連携のチャット機能を搭載するなど、府民向けにもAIを展開。
・AIが定着するかどうかの鍵は「現場の困りごとに合う形で提供できるか」。
・2025年にはAIエージェントの開発へと発展し、行政AI活用は新たなフェーズに。
医療田:
パートナー選びの話、パナソニック(Vol.39)もJAL(Vol.41)もそうだったよね。
AIに限らず大事だなー。
機械屋:
ええ。
そしてこのシリーズを通じて見えてきたのは、「AIを入れた」で終わりじゃなくて、「現場が使い続けたいと思えるか」が本当のゴールだということですね。
それは企業も行政も同じです。
医療田:
、、深い。
このシリーズ、行政の方にも読んでほしいなー。
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● よくある質問(FAQ)
Q. 大阪府はどのようなAIツールを導入していますか?
A. 2023年11月から全職員を対象に、Microsoftの「Bing Chat Enterprise」(現Microsoft Copilot)を全庁規模で試験導入しました。また、高齢者向けLINE公式アカウント「おおさか楽なび」にはTIS社の「Dialog Play」とAzure OpenAI Serviceを連携させたチャット機能を搭載しています。2023年9月には日本マイクロソフトと「AI利活用に関する事業連携協定」を締結しています。
Q. 行政の現場で生成AIはどのような業務に使われていますか?
A. 議事録の要約、あいさつ文の案出し、アイデアの整理、住民向け文書の言い回し調整、国からの通達を市町村向けにかみ砕いた文書の作成、ホームページの外国語版作成など、事務作業の効率化に幅広く活用されています。
Q. AIの導入は府民サービスにどう影響しますか?
A. 職員が事務作業にかける時間が減ることで、住民の相談対応、新規施策の検討、現場訪問などに時間を割けるようになります。また、高齢者向けAIチャット「おおさか楽なび」のように、府民に直接AIサービスを提供する取り組みも進んでいます。
Q. なぜ大阪府ではAIが職員に定着したのですか?
A. 「上から押し付ける」のではなく、「現場がどの業務で困っているか」に合わせてツールを提供したことが大きいと考えられます。事務局が利用部署に出向いて活用事例をインタビューし、庁内サイトで紹介するなど、利用を広げるための地道な取り組みも効果的でした。
Q. 大阪府のAI活用は今後どう発展しますか?
A. 2025年9月には日本マイクロソフトと「行政特化AIエージェント」の開発を発表し、「AIエージェント実証コンソーシアム」を設立予定です。行政案内、相談対応、多言語対応などにAIエージェントを試験導入し、将来的には住民の声をリアルタイムで施策に活かす仕組みも想定されています。
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※記載の内容は執筆時点の公開情報に基づきます。
●参考
大阪府、生成AIを試験活用 11月6日から全庁規模で(日本経済新聞、2023年10月)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF3037V0Q3A031C2000000/
AI の利活用推進に向けた事業連携協定を大阪府と締結(日本マイクロソフト、2023年9月)
大阪府とマイクロソフト、AI エージェント活用で府民サービスの質向上へ(日本マイクロソフト、2025年9月)
大阪府、Googleと生成AIで連携 雇用ミスマッチ緩和(日本経済新聞、2024年6月)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF187GW0Y4A610C2000000/
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https://www.youichimachida-ai.com/blog/-2ai-vol43-coworkai
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