2分で読める「生成AIのいま」VOL.16 – AI技術革新で仕事はどう変わる? –Future of Jobs Report 2025から読み解く「将来の備え方」-
- 生成AIについて学べるブログシリーズ。今回は「AIでわれわれの労働はどう変わるか?」がテーマ。ちょっと長くなりましたが、ご一読いただけると嬉しいです。
簡単に読めるよう、仮想キャラクター(30代女性医師の医療田恵と、病院に出入りしているエンジニアの機械屋ヒロト)の会話形式でお届けしています。
VOL.16 – AI技術革新で仕事はどう変わる? –Future of Jobs Report 2025から読み解く「将来の備え方」-
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機械屋:
「医療田さん、お邪魔しています。。今日もお仕事お忙しそうですね」
医療田:
「ああ、、機械屋さん。こんにちは。今日も大忙しよ。
あ、でも、今ひと段落したところだから。
ねえ、何か面白いお話ある?」
機械屋:
「うわ、いきなり漠然としたテーマですね。
そうですね。。
お仕事といえば。医療田さん。
世界経済フォーラムの『Future of Jobs Report 2025』って読みましたか?
医療田:
「機械屋さん、バカにしてる?読んでるわけないでしょう、そんなの。
いいから早く中身を教えて!
機械屋:
「。。ええとですね。
まずすこし衝撃的な報告から行くと、『Future of Jobs Report 2025』によると、1,000社超のうち86%が『AIや情報処理技術がビジネスを根底から変える』って回答してるんですよ。」
医療田:
「え、86%!?そんなに?」
機械屋:
「そうなんです。
そこで、AIが台頭し続ける時代にも必要とされるスキルについても、このレポートで紹介されています。」
医療田:
「へーっ、興味あるんだけど。」
1.ソフトスキルについて
機械屋:
「まずは“ソフトスキル”。
レポートによれば、企業が重視するコアスキルトップ5はこんな感じです:
・分析的思考
・レジリエンス(困難に折れない力)/柔軟性/アジリティ
・リーダーシップ&社会的影響力
・創造的思考
・モチベーション&自己認識
これらはいずれも、現在のAIだけでは生み出せない、人間ならではの強みなんです。」
医療田:
「ううん。。
モチベーション、くらいは何となくわかるけど、そのほかのものはよくわからないなあ。私みたいのでもわかるように教えてよ。」
機械屋:
「もちろんです。簡単にいいますと:
・分析的思考:複雑な問題を分解して整理し、論理的に判断して解決策を見つけ出す能力です。
・レジリエンス(困難に折れない力)/柔軟性/アジリティ:予想外のトラブルやストレスにも挫けず、素早く柔軟に対応しながら前進する力です。
・リーダーシップ&社会的影響力:他人を動機づけたり影響を与えたりして、チーム全体を良い方向へ導くスキルです。
・創造的思考:新しいアイデアや解決方法を考え出し、既存の枠を超えて革新的な視点を持つ能力です。
・モチベーション&自己認識:自分自身の価値観や目的を明確に理解し、それを行動に結びつけて継続的に努力する能力です。
Anthropicのアバ・バルウィット氏も『AIは経済的に有用なタスクをほぼすべてこなすが、判断や価値観の統合は人間が担うべき』と言ってます(Balwit, 2023)。上に挙げたスキルはいずれも、この"判断や価値観の統合"に必要な能力、といったところでしょうか。」
医療田:
「うーん、"判断や価値観の統合"に必要な能力、ね。
あー、そうなると、なんだろ、、
教養、というか、リベラルアーツ、っていうんだっけ?そういうのが大事になっていきそうだなあ。」
機械屋:
「ですから、医療田さんも心理学や哲学など他分野の教養を日頃から取り入れて、ソフトスキルを磨くのが大事ですよ。」
医療田:
「はいはい、わかりました。私も今度こそ心理学の本、ちゃんと読んでみようかな…(汗)。」
2.プログラミング需要の不確実性
医療田:
「ああ、そうそう、AIで置き換える仕事、といえば。
プログラマーさんの仕事はどうなるの?いまのAIって、コードをバリバリ書いてくれるんでしょ?」
機械屋:
「確かに、GenAIはすでにGitHub Copilotなどでコード生成が可能です。Anthropicのダリオ・アモデイ氏なんて『エントリーレベルのホワイトカラー業務は5年以内にAIに置き換わるかもしれない』って警告してるくらいです(Amodei, 2023)。」
医療田:
「えぇ〜、じゃあプログラマーさんたちの仕事はどうなるの?!ごっそりなくなっちゃうわけ?」
機械屋:
「いやいや、それは違いますよ。AIが“コードを書く”のはできても、その上流の“仕様設計”や“セキュリティチェック”、さらには生成されたコードの“品質保証”は人間が担わないとダメです。Courseraのデータでも、『個人ユーザーはプロンプトエンジニアリングを学び、企業は職場でのAI活用を重視』と出ています(Coursera, 2025)。だから『ただ黙々とコードを書く』だけの需要は減るかもしれませんが、『AIと協働してシステムを作る力』はむしろ増えます。」
医療田:
「なるほどー。」
機械屋:
「プログラミングとかコードを作成するコーディングといった仕事は、これまで専門職の世界でしたが、今後はAIによって一気に民主化するというか、誰にでも身近なのものになることも確かですね。
ですから、例えば、医療田さんのような非エンジニアも、“AIにどう指示を出すか”とか“AIが出したものをどうチェックするか”といったことは学ぶ必要性が増しているとも言えます。」
3.未来は"白"でも"黒"でもない
医療田:
「『AIで仕事がなくなる=悲観論』という話があったかと思えば『AIで新しい仕事が生まれる=楽観論』という話も聞くし、真逆の将来予測だなあって思うんだけど。。機械屋さんはどう思う?」
機械屋:
「そうですね。。あまりそう簡単に語れないのでは?というのが正直なところです。」
医療田:
「ほうほう?」
機械屋:
「レポートでもAIの影響については『地域・産業・個人によって影響はマチマチ』と述べていて、白黒で判断できないとされています。
例えば、IT先行地域ではAI開発のための新ポジションが増えて楽観的かもしれない一方、地方の中小企業は導入コストが壁になってAI化から取り残されるリスクが高い。
しかしながら、この前提も、AIのある新技術一つでひっくり返されるかもしれません。
この不均一性と予測困難性があるので、一概に“白か黒かで語る”のはいささか現実的でない、かなと。」
医療田:
「そっか。。」
機械屋:
「とはいえ、これまでの産業革命やIT革命は主に物理的な作業や情報の流通を変えましたが、生成AIは“人間の思考プロセスを直接サポート・置き換える”という意味で"これまでとは違う"のも確かです。
DeepMind共同創業者ムスタファ・スレイマン氏も『AIは長期的には人間の労働を置き換える』と明言しています(Suleyman, 2024)。さらに、OpenAIのサム・アルトマン氏は米上院公聴会で『70%の仕事が失われ得る』と認め、速度感が過去とは比べ物にならないと強調しました(Altman, 2024)。」
医療田:
「70%って…それって、想像を絶する数字だね。これまでも機械化で仕事は減ってきたけど、今回は“思考そのもの”が対象だから、まさに変革とクラスが違うわけね。白でも黒でもない、とはいいながら、その影響はやっぱり、、」
機械屋:
「。。空前絶後、といったところでしょうか。」
医療田:
「ああ、サンシャイン、、」
機械屋:
「医療田さん、、お笑いお好きなんですか?」
4.まとめとアクション
医療田:
「え、、っと。じゃあ、これから私たちに何ができるかな?」
機械屋:
「それぞれすぐできるアクションを整理しておきましょう。
個人としては以下のようなことが重要になるでしょう(ChatGPTに考案してもらいました):
・他分野を横断的に学ぶ
・哲学、心理学、社会学などの教養を取り入れてソフトスキルを磨く(Balwit, 2023)。
・好きなテーマでもいいから、月に1冊は“教養本”を読む習慣を。
・AIリテラシー&プロンプト設計力を習得
・CourseraやLinkedIn LearningでGenAIの基礎を学び、ワークショップで実践する(Coursera, 2025)。
・「AIを使って何か作る」ミニプロジェクトを友だちや同僚と一緒に始める。
・実践的プロジェクトで“AI×人間協働”を体験
・オープンソースやハッカソンに参加し、AI生成コードのレビューと改良を繰り返して感覚を身につける。
・自分の仕事や研究テーマにAIを取り入れてみて、“何ができて何ができないか”を肌感覚で学ぶ。」
医療田:
「うっわ、、やれること、というか、やるべきことたくさん。。。
ま、まずはできそうなことからやってみるよ。」
機械屋:
「それがいいと思います。
企業など組織としても、“分析的思考・レジリエンス”などソフトスキルに対する意識を社員・職員に持ってもらう研修を企画してみたり、リスキリング&ジョブローテーション制度の整備を行うことが良いかもしれません。
あと、これもレポートに記載されていたことですが、行政にも、通信インフラやクラウドリソースへの補助金を拡充てほしいですね。地方や中小企業でもAI導入が後回しになったり、技術格差が生まれないようしてほしいものですね。」
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【参考文献】
World Economic Forum『Future of Jobs Report 2025』(2025)
Amodei, Dario. "A blunt, scary warning about AI's impact on white-collar jobs," Anthropic, 2023.
Balwit, Ava. 「テクノロジーが終わらせる働き方」Anthropicスタッフブログ, 2023.
Suleyman, Mustafa. "AIは長期的に労働を置き換える," DeepMind, 2024.
Altman, Sam. 米上院公聴会証言(2024年)
Coursera. "Generative AI Skills Demand Report," Coursera Insights, 2025.