2分で読める「生成AIのいま」 Vol.17 ─ サム・アルトマン論文 “The Gentle Singularity” を噛み砕く ─

- 生成AIについてやさしく学べるブログシリーズ。今回は渾身の一作です!

本日付でOpenAI CEOのサムアルトマンが、シンギュラリティについての論文を出しました。非常に興味深い内容だったので、さっそく医療田さんと機械屋さんの会話でまとめました。

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1.実はシンギュラリティは、すでに静かに始まっている

医療田

ねえ機械屋さん、OpenAI CEOのサム・アルトマンが「穏やかなシンギュラリティ」って論文を書いたって聞いたんだけど、結局どういう話?」

機械屋

「おっ、耳が早いですね!

ちなみに医療田さん、シンギュラリティ、ってなんだか、わかってます?」

医療田

「。。私のこと、とことんばかにしてない?

そのぐらいは分かってますよ。

えーと、たしか

"これまでの理論が通じなくなるポイント。AIの進化においては、AIがAIを開発できるようになり、自発的に際限なく自己開発・改良が可能になってしまった状態"

かな。これでいい?」

機械屋

「ばかにしてるわけじゃなくてですね、いまの説明、かなり正確ですよ。さすが!

“シンギュラリティ”は元々、物理学の"特異点"という意味で、ブラックホールの中心みたいに、"それ以降の未来を予測できなくなるポイント"という意味です。

これがAIの分野では:

AIが自分より賢いAIをつくる → そのAIがもっと賢いAIをつくる → …

というように、もはや人間が介入できないスピードで進化が進んでしまう。

これがAIの技術的特異点=シンギュラリティって呼ばれるんです。」

医療田

「よし、いい線言ってたね、私。

で?そのシンギュラリティが"優しい"ってどういう意味なんだろうね?

機械屋

「そこがこの論文の1番のポイントだと思うんですよね。サムアルトマンは、

「実はシンギュラリティはすでに静かに始まっている」

と主張しています。

論文の前半部分を、ぼくなりにわかりやすく言い換えると…

― 2025年6月の現在、まだまだできないことはたくさんある。

宇宙に行くのは難しいし、人はまだ病気で亡くなっていく。

ChatGPTがでて2年以上の月日が流れたが、まだ何も変わっていないのでは?

そう思う人がいるかもしれないが、じつは、”シンギュラリティ”はもう始まっている ―

そう言っているようです。

医療田

「えっ?!」

機械屋

「そうなんです、、鳥肌モノでしょ?

いつか?いつなのか?と思われていたシンギュラリティに、

われわれはすでに立っているんだ、と言っているんです」

2.「ChatGPT前」と何が変わったのか?

医療田

「え、でもちょっと待って!

たしかにChatGPTとか生成AIで、メールは下書きが楽になったし、わたしでもジブリみたいな絵が描けるようになったし、でも、そんなに世の中変わってないじゃない?

機械屋

「おっしゃる通りです。サムは

『まだ街をロボットが歩き回るわけでも、ほとんどの人が一日中AIと会話しているわけでもない。

それどころか、最も本質的な意味では、2030年代も劇的には変わらないかもしれない。

人々は引き続き家族を愛し、創造性を表現し、ゲームを楽しみ、湖で泳ぐだろう。』

と言っています。」

医療田

「、、な、なるほど、、み、湖で泳ぐ日本人はそんなに多くないような気がするけど。」

3."シンギュラリティの始まり"の後に待つ未来

機械屋

「きれいな湖で泳ぐのって、ちょっと楽しいかもしれませんけどね。

さて、私たちの本質は変わっていませんよね。

でも、と、サムは言います。

メールや画像生成にAIを使うことには、すっかり慣れてしまったでしょ?と。

『私たちは驚くべきデジタル知性と共に暮らし、最初の衝撃を超えてすぐにそれに慣れてしまった。

美しい文章を書くAIに驚くのもつかの間、それが美しい小説を書けるかどうかをすぐ考えるようになり、病気の診断をするAIに驚くのもそこそこに、それが治療法を見つけるかを期待するようになった。

そして、小さなプログラムを書けるAIに感心して間もなく、新しい会社を作れるかどうかを考えるようになるだろう。

シンギュラリティとは、このように驚異が当たり前になり、やがて日常になることである。』」

医療田

「た、たしかに。。」

機械屋

「『科学者からはすでに「AI以前より生産性が2〜3倍高まった」という声がある。

すでに構築したツールは今後さらなる科学的発見を助け、より優れたAIシステムを作る助けになる。

AIは、たしかに、まだ”完全に自律して自己改善”するには至っていない。しかし、

その初期段階である、くらいには言えるだろう。

技術進歩の速度は今後も加速する。

そして今の我々が、すっかり、AIメールの下書きとジブリ風の画像になじんでしまったように、

人間はほぼどんなことにも適応できるだろう。

多くの職が消える難しい局面もあるが、世界は急速に豊かになり、これまで想定できなかった新しい政策も検討が可能になるだろう。

変化は徐々に進むが、数十年後振り返れば巨大な変革となる。

歴史が示すように、新しい仕事や欲求を見出し、新しいツールにも素早く馴染むだろう。

人間の強みは他者への関心と共感であり、機械にはないものである。

千年前の農民が私たちの仕事を、一日中スクリーンと向き合い、ボタン上の文字盤をたたき続ける、私たちの”日常”を見たらどう思うだろうか。

きっと「なんだこの遊びは?」と感じるのではないだろうか。

同じことが未来にも言える。

千年後の仕事も、今の我々がもし、見ることができるのであれば、それは”奇妙な遊び”にしか見えないに違いない。

その時代の人には極めて重要に感じられるだろうが。

新たな驚異のペースは驚異的だ。

2035年までに想像もつかないような発見があり、宇宙開拓や脳とコンピューターのインターフェースも登場するだろう。これも、想像すれば驚異的に感じるが、実際には徐々に慣れるものだ。

私たち全員が、世界のための「脳」を作っている。私たちは今、超知能研究会社としてその道を進み続けている。知能が安価に手に入る未来は目の前にある。

』」

医療田

「な、なんだか、途中から、機械屋さんがサム・アルトマンに見えてきちゃった。。」

※元論文はこちらから読めます:

https://blog.samaltman.com/the-gentle-singularity

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https://www.youichimachida-ai.com/blog

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