2分で読める生成AIのいま Vol.65 - 【速報】「鍵の仕組み」そのものが変わる ― 改正個人情報保護法と医療データAI利活用②

前回(Vol.64)では、現行法の枠内で「鍵のかけ方を変える」方法を解説しました。

ところが2026年7月、個人情報保護法そのものが改正・成立。鍵の仕組みが根本から変わろうとしています。

医療田さんと機械屋さんの会話でどうぞ。

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● 速報!法律が動いた ― 2026年7月10日

医療田:

ねえ機械屋さん。

機械屋:

はい、なんでしょう。

医療田:

前回、「医療デジタルデータAI利活用ガイドライン」の解説してもらったけど、仮名加工情報とか共同利用で「データを使える方法」の話をしてくれたじゃない?

機械屋:

はい。現行法の枠組みの中で、いかに合法的にデータを活用するか、という話でしたね。

医療田:

その話をしたばかりなのに、、

なんか、法律自体が変わったって聞いたんだけど。

機械屋:

そうなんです。。よくご存じでしたね。

じつは、2026年7月10日、改正個人情報保護法が参議院で可決・成立しました。

医療田:

えっ、今月じゃん。ていうか、めちゃくちゃ最近じゃん!

機械屋:

今月です。

4月7日に閣議決定、5月26日に衆議院通過、そして7月10日に成立。

かなりのスピードで進みました。

医療田:

で、何が変わるの?

機械屋:

大きく4つの柱がありますが、今回の話に一番関係するのは「統計特例」と呼ばれる新しい仕組みです。

医療田:

とうけい、、とくれい?

機械屋:

AIモデルの学習や統計情報の作成を目的とする場合に限り、個人データを第三者に提供する際の本人同意を不要にする、という特例です。

医療田:

、、ちょっと待って。

それってつまり、前回あんなに苦労して説明した「同意が取れない壁」を、法律のほうから崩しちゃったってこと?

機械屋:

端的に言えば、そうなります。

● 改正のポイント ― 何が緩和され、何が強化されたか

医療田:

前回の話が全部ひっくり返る、、みたいな?

機械屋:

いえ、ひっくり返るわけではないんです。

順を追って見ていきましょう。

改正には4つの柱があります。

医療田:

ふんふん。

機械屋:

1つ目が「統計特例」。今お話ししたもので、AI開発のためのデータ利活用を促進する方向です。

2つ目が「同意不要例外の拡大」。たとえば、病院が「学術研究機関」に含まれることが法律上明示されました。

医療田:

あ、それは大きいかも。。

いままで、大学病院なら学術研究の例外が使えたけど、市中病院は微妙だったんだよね。

機械屋:

そうです。前回のパターン①「学術研究のみ」の使い勝手が、市中病院でもよくなる可能性があります。

そして3つ目が「新しいリスクへの規律強化」。顔認証データの扱いや、16歳未満の子どもの個人情報について、新しいルールが設けられました。

医療田:

強化のほう、もあるんだ。

機械屋:

はい。緩和だけではありません。

4つ目が「課徴金制度の新設」。

個人情報を不正に大量取得・利用した事業者に対して、得た利益相当額の課徴金を科す仕組みが新しくできました。

医療田:

ほう。。

アメとムチ、ということ?

機械屋:

まさにそうですね。

使いやすくする一方で、悪用したら厳しく罰する。

● 統計特例と医療データ ― 何が変わるのか

医療田:

で、肝心の医療データの話に戻ると。

統計特例で、要配慮個人情報も対象になるの?

機械屋:

なります。

病歴、健康診断の結果、障害の情報 ―― いわゆる要配慮個人情報も、AI開発や統計情報の作成目的であれば、本人同意なしで第三者に提供できるようになります。

医療田:

、、それ、すごく大きな話じゃない?

前回、「要配慮個人情報だから使えない」って散々言ってたのに。

機械屋:

はい。前回のデータ利活用GLでは、現行法の枠内で「仮名加工情報+共同利用」という道を工夫して作りました。

改正法は、その壁そのものを法律のレベルで低くしたわけです。

医療田:

たとえるなら、、

ガイドラインは「高い壁を迂回する抜け道の地図」で、改正法は「壁自体を低くした」?

機械屋:

うまい例えですね。

ただし、壁を低くしたぶん、別の柵が設けられています。

医療田:

別の柵?

機械屋:

統計特例を使うには、いくつかの条件があります。

まず、一定の事項を公表しなければならない。

次に、提供元と提供先の間で書面による合意が必要。

そして、受け取った側は目的外利用と再提供が禁止されます。

医療田:

なるほど。。

壁は低くなったけど、入口に門番がいる、みたいな感じか。

機械屋:

そうです。完全に自由になったわけではありません。

● 賛否が分かれている ― 医療界からの懸念

医療田:

でもさ、、

ちょっと怖くない? 正直なところ。

機械屋:

そう思われる方は少なくないです。

実際、全国保険医団体連合会は、この改正に対して強い反対の声明を出しています。

医療田:

へえ。どういう懸念?

機械屋:

主な懸念は3つあります。

1つ目は、データを外部提供する際に、氏名の匿名化が義務づけられていない点。

医療田:

えっ。匿名化しなくても渡せるの?

機械屋:

条件を満たせば、そうなります。

もちろん安全管理措置は求められますが、匿名化自体が法律上の義務ではない。

医療田:

それは、、ちょっと心配だね。

機械屋:

2つ目は、海外企業や個人事業主も、一定の条件を満たせばデータの提供を受けられる点。

3つ目は、被害者に代わって消費者団体が訴訟を起こせる「団体訴訟制度」が盛り込まれなかった点です。

医療田:

、、うーん。

「使える」ようにはなったけど、「安全に使える」かどうかは、まだ答えが出ていない?

機械屋:

率直に言えば、そういう面があります。

施行までの間にガイドラインや規則で具体的な運用を詰める、というのが政府の方針です。

厚労大臣も国会で「ガイドライン策定に主体的に関わる」と答弁しています。

● じゃあガイドラインは不要になるのか

医療田:

ねえ、そうすると、前回やったデータ利活用GLって、いらなくなるの?

機械屋:

いい質問ですね。答えは「いらなくならない」です。

医療田:

そうなの?

機械屋:

改正法は「使っていいよ」という法的な許可を与えたもの。

でも、「じゃあ具体的にどうやって仮名加工するの?」「画像データのDICOMヘッダはどう処理するの?」「遺伝子データは?」といった実務的な手順は、改正法には書かれていません。

医療田:

あー、、そうか。

法律は「通行許可証」で、ガイドラインは「地図」なんだ。

機械屋:

その通りです。

むしろ改正法で道が広がったぶん、「どの道を、どう歩くか」を示すガイドラインの重要性は、むしろ増しているとも言えます。

さらに、統計特例の具体的な運用ルールも、今後策定されるガイドラインに委ねられていますから。

医療田:

なるほどね。。

「使っていい」と言われても、「使い方」がわからなければ意味がないもんね。

● まとめ ― 「攻め」の前提が変わる

機械屋:

では、今回のポイントを整理しましょう。

・2026年7月10日、改正個人情報保護法が成立。AI開発・統計作成目的での個人データ提供が、本人同意なしで可能になる「統計特例」が新設された

・要配慮個人情報(病歴等の医療データ)も統計特例の対象。「使えない壁」が法律レベルで低くなった

・病院が「学術研究機関等」に含まれることが明示され、学術研究の例外が市中病院にも広がった

・一方で、匿名化義務なし・海外提供可能・団体訴訟制度なし、といった懸念も残る

・改正法は「通行許可証」、データ利活用GL(Vol.64)は「地図」。両方が揃って初めて安全に歩ける

・改正法は公布後2年以内に施行予定。全面施行は2028年頃の見込み

医療田:

攻めの話、まだ続くね。。

機械屋:

次回Vol.66では、いよいよ実務に入ります。

データの種類ごと ―― 診療テキスト、医用画像、遺伝子情報など ―― に、実際にどう加工してどう渡すのか。

改正法がどうなろうと、この「具体的な手順」の部分は変わりませんので。

医療田:

了解。

今回の改正法は、正直、、まだ不安もあるけど。

「使えるようになった」と「安全に使える」は別物だって、よくわかった。

機械屋:

はい。

施行は2028年頃の見込みですので、それまでの間に具体的なガイドラインや規則が整備されていくはずです。

施行されたタイミングで、改めて具体的な変更点や実務への影響を整理したいと思います。

医療田:

うん、そうしよう。

追いかけっこだね、法律と私たちの理解。

機械屋:

でも追いかけ続けることが大事ですよね。

立ち止まったら、その間に世界が変わってしまいますから。

医療田:

、、それ、前にも聞いたような気がする 笑

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● よくある質問(FAQ)

Q. 改正個人情報保護法はいつ施行されますか?

A. 2026年7月10日に成立しました。公布後2年以内に施行される予定で、全面施行は2028年頃の見込みです。統計特例の具体的な運用は、今後策定される規則やガイドラインに委ねられています。

Q. 統計特例とは何ですか?

A. AIモデルの学習や統計情報の作成を目的とする場合に限り、個人データを第三者に提供する際の本人同意を不要とする特例です。病歴等の要配慮個人情報もこの特例の対象に含まれます。ただし、一定事項の公表、提供元・提供先間の書面合意、目的外利用・再提供の禁止などの条件が課されます。

Q. 要配慮個人情報も本当に同意なしで提供できるようになるのですか?

A. 統計特例の条件を満たせば、法律上は可能になります。ただし匿名化が法律上の義務ではない点などに懸念の声があり、医療関係団体からも反対意見が表明されています。具体的な安全措置は今後のガイドラインで定められる予定です。

Q. Vol.64で解説したデータ利活用ガイドラインは不要になりますか?

A. いいえ。改正法は「使っていい」という法的許可ですが、データの具体的な加工手順や安全管理の実務はガイドラインが指針となります。改正法で道が広がったぶん、「どう歩くか」を示すガイドラインの重要性はむしろ増しています。

Q. 課徴金制度とは何ですか?

A. 個人情報を不正に大量取得・利用した事業者に対し、違反行為で得た利益相当額の課徴金を科す制度です。対象は本人数1,000人超の大規模事案で、不適正利用、不正取得、第三者提供制限違反、統計特例違反の4類型に限定されています。

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●参考

・改正個人情報保護法(2026年7月10日成立)

・個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律等の一部を改正する法律案 概要」(2026年4月7日閣議決定)

https://www.ppc.go.jp/files/pdf/260407_gaiyou.pdf

・セキュリティ対策Lab「改正個人情報保護法が成立、病歴など要配慮個人情報も同意なく提供可能に」(2026年7月10日)

・インターネットプライバシー研究所「個人情報保護法改正案の閣議決定を読む」(2026年4月8日)

・厚生労働省「医療デジタルデータのAI研究開発等への利活用に係るガイドライン」(2024年9月30日通知)

●関連記事

・Vol.64 病院の宝は、鍵のかけ方を変えれば使える ― 医療デジタルデータAI利活用ガイドライン①

(公開後に記入)

・Vol.63 チェックリストが病院を救う ― 3省2ガイドライン徹底解説④(最終回)

https://www.youichimachida-ai.com/blog/2ai-vol63-32

・Vol.59 「学習オフにしてるから大丈夫」では足りない ― 3省2ガイドラインと生成AI、本当のルール

https://www.youichimachida-ai.com/blog/2ai-vol59-32ai

●2分で読める「生成AIのいま」シリーズ。バックナンバーはブログからどうぞ!

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