2分で読める生成AIのいま vol.34 AIX - AI transformationという概念
今回は、「AIX(AIトランスフォーメーション)」について。
DX(デジタルトランスフォーメーション)と比べて、共通する部分もある二つのX(transformation)ですが、
それぞれの側面を詳しく見ていくと、デジタル化、AI化をそれぞれより正確に見据えることができるようになるのではないでしょうか。
今回も医療田さんと機械屋さんの会話でどうぞ。
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医療田:
ねえ機械屋さん。
この間、雑誌で「AIX(AIトランスフォーメーション)」っていう新しい言葉を見かけたんだけどさ。
機械屋:
お、それは鋭いですね。
確かに最近、金融業界(みずほFGなど)で「AIX(AIトランスフォーメーション)」という専門部署ができたり、一般に「AX」として、DXの次のステップを定義する動きが出てきています。
医療田:
へー。
でもさ、DXと何が違うの?
また新しい横文字並べて、煙に巻こうとしてない?
機械屋:
ふふ(笑)
いえいえ、実はこれ、「DXの失敗」を乗り越えるための重要なカギになるかもしれないんですよ。
システム理論学者のラッセル・アコフ(Russell L. Ackoff)が提唱した「DIKWピラミッド」をご存知ですか?
この概念を使うと、DXとAIXの違いがスッキリ理解できるんです。
医療田:
ら、らせる・あこふ。。?
機械屋:
この「DXとAIXの違い」を理解するには、そのピラミッドの考え方がとても役に立つんです。
まずは、アプローチの根本的な違いから考えてみましょうか。
### 1. 「道具」から「知能」への進化
機械屋:
まず、これまでのDX(デジタルトランスフォーメーション)は何を目指していたかというと、「アナログをデジタルにする」ことでした。
紙をPDFにしたり、ハンコを電子署名にしたり。
でもこれ、「人間がデジタルな道具に合わせてあげる」側面がありましたよね。
医療田:
うん。アプリの導入の時、業者の人から
「このフォーマット通りに入力してください!」って言われるよね。
機械屋:
私個人的には、この「人がデジタルな道具に合わせる」という作業が難しいファクターがいくつかあるように思うのですよね。
医療田:
というと?
機械屋:
たとえば、です。
シチュエーション:病院や自治体など、構成単位間で独自に構成されたルールがあり、これをデジタル化するのが難しい。
グループ:デジタルの操作法を覚えられない層が存在する。
などですかね。
医療田:
なるほどね。。
機械屋:
DXは「情報の器」をデジタル化しましたが、それを使うのはあくまで人間でした。ここに「デジタルに合わせるための知能」が必要だったわけです。
一方でAIX(AIトランスフォーメーション)は、その器の中に「知能」を宿らせるプロセスなんです。
医療田;
知能を、宿らせる?
機械屋:
ええ。
道具(デジタル)に「判断能力(Intelligence)」を組み込んで、人間が合わせるのではなく「機械が人間に合わせてくれる」ようにすることが可能です。
DXが「土台」なら、AIXはその上に建つ「家」のようなものです。
これが決定的な違いですね。
### 2. 「NI(自然知能)の限界」を突破する
機械屋:
次に、社会的な課題の解決という視点でも見てみましょう。
これまで社会のボトルネックになっていたのは何だと思いますか?
医療田:
うーん。。人手不足、とか?
機械屋:
そうですね。もっと言うと、高度な判断ができる「人的資源」とか「専門家」といった「知能を持った資源」、その数と時間に限りがあったことです。
医療田:
あー、結局メールやチャットが早く届くだけで、
返信考えたり決断したりするのは私だもんね。。
仕事の量だけ増えて、私の頭の処理能力は変わってないし。
機械屋:
はい。
そこでAIXです。AIXは判断(Intelligence)そのものをスケーラブルにし、専門性の民主化をもたらします。
「人間という知性を持った資源」の数量制限を解除すること、これこそがAIXの本質なんです。
医療田:
なるほどーー。。
機械屋:
たとえば、文書作成なんかもそうですよね。
これまでであれば、文書作成やその推敲を担えるのは人間という知能だけだったわけです。
しかし、AIの出現によって、「知能」という資源が手軽に利用可能となった。
これまで、アイディア出しや相談、資料の翻訳や、要約、書き上げた文章の校正などには、すべて「知能=人間」の助けが必要でした。
それが、、どうですか、医療田さん?
医療田:
・・たしかに。
これ全部、生成AIに頼めるようになったことだね。
機械屋:
そうなんですよ。これが「AIXの本質」、つまり「知能の民主化」です。
### 3. 階層構造(DIKWピラミッド)による整理
機械屋:
では、冒頭で少し触れた「DIKWピラミッド」を使って、この関係を整理してみましょう。
医療田:
さっきのアコフさんのやつね。
結局、そのピラミッドってどうなってるの?
機械屋:
DIKWは、Data(データ)、Information(情報)、Knowledge(知識)、Wisdom(知恵)の頭文字です。
DXとAIXは、このピラミッドの中で担当する「階層(レイヤー)」が明確に分かれているんです。
- **DX層(Data / Information)**:事実を蓄積し、整理する「基盤」。
- **AIX層(Knowledge / Wisdom)**:整理された情報から「意味」を抽出し、判断を下す「知能」。
医療田:
つまり、
DXで土台を作って、AIXで頭脳を乗っける、みたいな?
機械屋:
おっしゃる通りです。
この2つを分けることで、「正確性が求められるインフラ(DX)」と「有用性が求められる知能(AIX)」を適切に使い分けることが可能になるんです。
### 4. AIXがDXを「救済」する
医療田:
でもさー、機械屋さん。
そうは言っても、土台のDXができてないとAIXも使えないんでしょ?
結局、あの面倒な入力作業からは逃れられないんじゃ。。
機械屋:
そこが面白いところでして。
実は逆説的ですが、「AIXがDXを救済する」というアプローチが可能なんです。
医療田:
救済?
機械屋:
これまでは「DXのためにアナログを捨て、デジタル入力せよ」と強要してきました。これが現場を疲弊させていた。
しかしAIXが介入するとどうなるか。
入口は「紙の問診票」というアナログのままでも、AIというインテリジェンスがそれを読み取って、裏で勝手に構造化データに変換してくれるんです。
医療田:
!!
なるほど!
私が必死に打ち込まなくても、AIが「はいはい、こういうことですね」ってデータにしてくれるんだ!
機械屋:
そうです。
人間に無理をさせず、結果としてDX(データのデジタル化)を加速させる。
AIXはDXの「ラストワンマイル」を埋める触媒になるわけです。
### Devil's Advocate:あえて残しておくべき懸念点
医療田:
なんか、ここまでの議論、いいことずくめな感じだよね、AIX。
機械屋:
。。と、手放しで喜びたいところですが、
議論の健全性を保つために、あえて批判的な視点も提示しておきましょう。
医療田:
英語のディスカッションで、Devil's Advocate、っていうやつでしょ?
あえて反対意見を出して、多角的に考察する、ってやつだよね。
機械屋:
そうです。こういったときには大事な試みですよね。
いくつか懸念点はあります。
1. **「正確性」のトレードオフ**:DXが守ってきた「100%の正解」を、AIXの「確率的な正解」に置き換えて良いのか。いわゆるハルシネーションなどのリスクですね。
2. **NIの退化リスク**:AIXが専門家の役割を代替しすぎると、次世代の専門家が育たず、長期的に人類の知能が劣化するのではないか。
3. **言葉のロンダリング**:「AIX」という新語は、単に遅々として進まない「DXの失敗」を隠すためのラベルに過ぎないのではないか。
医療田:
むむむ。
3つ目とか、結構辛辣だね。。
でも、、たしかに2番目の話、「楽になる」ってことは「サボる」ってことと紙一重かもね。
機械屋:
2番目の「思考の放棄」につながるリスクなんかも、AIの普及によってとても危惧されていることで、は常に意識しておくべきですね。
そうなると今度は逆に、1番目に出てくるハルシネーション等のリスクに対しても、我々人間はますます無防備になるわけです。
医療田:
でも。。
どこかで読んだけど。
「文明の進歩とは、考えることなく行える操作の数を増やすことである」って、ホワイトヘッドさんも言ってた気がする。
計算しなくて済むようになったから、私たちはもっと高度な数学ができるようになったわけでしょ?
機械屋:
ほう。。!
素晴らしい引用ですね。ホワイトヘッド、イギリスの数学者・哲学者で、『プリンキピア・マテマティカ』の著者としても有名ですね。おっしゃる通りです。
AIXで「判断」の一部を自動化することで、人間は「人間にしかできない、より高度な判断」に集中できると信じたいですね。
医療田:
今回の議論、私は「AIXこそがDXのハードルを下げる」という話が印象的だった。
これまでの「IT化=不自由・面倒」っていうイメージが、ガラッと変わる気がするなー。
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