12月2日(RSNA2025 3日目):乳房MRIの最新技術動向と、AI活用の「現実」

本日は学会3日目。この日は会期中、初めて晴れ間が広がり、美しい雪景色と空のコントラストが見られました。


・・そういえば、余談ですが。
今年、ふと気が付くと、会場での質疑応答や業者との対話に、以前ほど苦労なくついていけるようになっている自分に驚きました。口をついて出てくる言い回しも、以前より増えた……かも?
実は、定期的にChatGPT相手の英会話練習を続けてきたんです。
ChatGPT、アップデートのたびにどんどん早口になるんですよね(笑)。それに必死についていくうちに耳と口が慣れたのでしょうか。
隙間時間に追加料金なしで英会話練習ができるのは、つくづくありがたい時代です。

● AIと放射線科医のコラボレーションに関する課題
午後は、「AIを活用した高度な医療品質改善(Advanced Quality Improvement Through AI)」に関するセッションに参加しました。 参加人数は決して多くなかったのですが、AIが浸透していく今後の読影現場を考えるうえで、極めて重要なお話が多かったため、冒頭で紹介します。

・Human-AI コラボの難しさ
Rajpurkar先生(PhD)による、人間とAIのコラボレーション(Human-AI Collaboration)の難しさについての講演が非常に印象的でした。Rajpurkar先生は、今年初めに私がオンライン参加した英国王立放射線科医会(RCR)の学会でもキーノートレクチャに登壇されており、その際のお話も鮮烈だったのを覚えています。

一般的に「AIは初心者やジェネラリストの読影をより強力にサポートし、恩恵を与える(底上げする)」と考えられがちですが、Nature Medicineに掲載された論文 "Heterogeneity and predictors of the effects of AI assistance on radiologists" によると、実際にはそうではないという驚くべき報告がありました。

- AIの恩恵に経験年数は関係ない - AIによって診断能が向上するかどうかに、医師の経験年数、専門性、AI使用歴といったファクターは有意な差をもたらさない、予測不能!
とのことです。これは衝撃。個別に管理する必要があるのか。。今年のキャッチフレーズではありませんが、まさに”Image the Individuals”。なんちゃって。


これまで「初心者が恩恵を受ける」とされていたデータの多くは、AI使用前後の比較方法(統計手法)におけるアーチファクト(平均への回帰)であったと指摘されていました。 また、「AIが確信を持っているが人間が迷っている時」は診断能が劇的に向上する一方で、AIが不確実な(自信がない)場合は、かえって人間の足を引っ張る傾向もあるようです。

・放射線科AI、シームレスはNG?!
一方、Depamede先生からは、AIへの過度な依存AI実装後のモニタリングについて、(オートメーション・バイアス)を防ぐための対策として、「結果をあえて見えにくくする」「表示に時間がかかるようにする」といった「認知的強制(Cognitive Forcing)」を設けた方が良いという報告が紹介されました。
これは、
「UIはシームレスでノンストレスであるべき」という、ITサービスの常識とは真逆のアプローチですよね。。
今後のAI実装において認識を改める必要があると感じました。
今後はバイアスに関するトレーニングや、AI単体ではなく「人間+AI」のチームパフォーマンスをモニタリングすることが不可欠になるそうです。
。。AIの出現によって、「AIによって読影精度にどういう影響が出たか?」を人間が監視する業務が増えるというのは……何とも皮肉な話ですが、それもまたAIにやってもらえばよいのでしょうか(笑)。

● 乳房MRI(短縮型撮像・DWI・AI)
話は午前に戻ります。
朝イチは乳房MRIの各種技術についてのセッションでした。

・Abbreviated MRI(省略型MRI)とUltrafast(造影後超早期撮像)
最初に登壇されたのは、以前から注目しているアーヘン大学のKuhl先生です。
ここではAbbreviated MRI(省略型MRI)の有用性と、プロトコルの整理についてお話がありました。 Kuhl先生の分類によると、「ショートプロトコル」は造影前後の撮影のみを指します。一方、それに加えてT2強調画像や拡散強調画像(DWI)を撮るものを「アブリッジ(Abridged)プロトコル」と呼ぶそうで、当院(京橋クリニック)で行っている検診プロトコルは、まさにこのアブリッジプロトコルですね。

また、Ultrafast MRI(超早期相)については、最新の研究で「時間分解能は高いものの空間分解能や病変視認性が低く、必ずしも標準的なフルダイナミックと比較してアドバンテージがあるとは限らない」というシビアな見解も示されており、使い所が重要であるとのことでした。

・拡散強調画像(DWI)とAI
続いて、拡散強調画像やADCに関する総括的なレビューがありました。
この中で名古屋大学の飯間先生の論文が引用されており、改めて、飯間先生のこの分野における貢献度の高さと、(友人の一人として親しみを込めて)そのセンスの良さに感激した次第です。


ウィーン大学のBaltzer先生による「MRIテクニックとAI」の講演では、現在若干停滞傾向にある(Baltzer先生が言っているのであって私の意見ではありません)乳房MRIが、AIによって新たな研究分野として再開拓される可能性について、相関的なお話がありました。

● マンモグラフィ、DBTにAIを用いた検診
同じ会場では続いて、マンモグラフィにおけるAI活用の研究発表がありました。 特に興味深かったのは、2日目でも触れたDeep Health社のAIを活用した「マルチステージ・ワークフロー」の演題と、MIT発のAIモデル「Mirai」です。 前者は、ジェネラリストが読影する場合を想定したもので、以下のような流れになります。
1.読影前にAIによる解析を行い、トリアージをする。
2.読影終了後、AIが見逃しの可能性があると判断した場合、専門家(Breast Radiologist)へ送る。
この仕組みにより、ジェネラリストとスペシャリストの差を埋めることができるという発表でした。

また、「Mirai」というリスクモデルを用いた研究では、AIが「今後1年以内に発症リスクが高い」と判定した上位10%の女性に対し、即日検査を行うワークフローを検証していました。その結果、がん発見率が通常検診の約12倍(5.9‰→70.4‰)に跳ね上がり、診断確定までの待ち時間が「平均37日」から「数時間(0.04日)」へと劇的に短縮されたそうです。「AIで順番を変えるだけ」で、これほど医療の質が変わるというのは驚きです。
先述のAIによる品質管理もそうですが、、いまやAIは「どう使うか」、ですね。

● 機器展示
この日は、シーメンスとキヤノンのブースを訪問しました。敬称略。
・シーメンス
Deep ResolveによるMRIの画質向上や、AIワークフローを確認しました。特に「Syngo Carbon」を用いた画像フロー補助では、所見の検出から文章化、そして読みやすいレポートへの統合までをAIが行う機能が紹介されており、ドイツ本国でのワークフロー最適化の進展に驚かされました。画像からレポート作成まで、もうAIができる時代というわけですね……日本ではまだ一般的ではありませんが。
・キヤノン
立位CTやフォトンカウンティングCT、最新のMRIについて説明を受けました。
特にMRIに関しては、自社によるコイル製造が可能になったことや、AI画像処理の急速な進歩により、これまでの「国内メーカーはMRIが弱い(すみませんこれは私見です)」という印象を覆す勢いを感じました。
日本のMRIも世界で十分戦える、あるいは今後リードしていけるのではないかという期待が膨らみ、将来的な装置更新の際にも頼もしい提案がいただけるのではないかと感じました。

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