2分で読める生成AIのいま VOL.93 新設の防災庁が呼びかける『3日分の備蓄』 ― AIとサイバーセキュリティの視点から呼びかけを読み解く

政府が11月2日、全国民に「最低3日、できれば1週間分」の備蓄を求める緊急要請を出します。

同じ時期に英国でも「3日分の備え」を呼びかけるキャンペーンが始まり、SNSでは「AIによるサイバー攻撃の前兆では」という声も広がりました。

本当の理由は何なのか。Vol.77でお話しした「Mythos級」の話とは、どうつながるのでしょうか。

(※2026年10月31日時点の公開情報に基づきます。緊急要請の本文は11月2日に公表予定です。)

今回も医療田さんと機械屋さんの会話でどうぞ。

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● 「全国民に緊急要請」で、ざわついた一週間

医療田:

ねえ機械屋さん。

家族が「政府が全国民に緊急要請だって!」って騒いでて。

食料と水とトイレを1週間分、って。

機械屋:

細野防災担当大臣の発言ですね。

医療田:

SNSを見たら、「AIのサイバー攻撃でインフラが止まるんじゃないか」とか、「第三次世界大戦の前触れ」とか、、

ちょっと、やだ、怖いんだけど。。

機械屋:

不安になりますよね。。

今日は、Vol.77と同じように、「確認できること」と「推測」に分けて整理してみます。

医療田:

うん、お願い。

機械屋:

まず、要請の中身です。

11月2日に「防災庁」が発足します。災害対策の司令塔になる、新しい国の役所です。

医療田:

あ、新しくできる庁なの?

機械屋:

そうですよ。

その発足初日に、国民・自治体・各省庁の三方向へ「緊急要請」を出す予定です。

国民向けには、食料・水・携帯トイレを「最低3日、できれば1週間分」用意してほしい、という内容です。

水は、飲み水と調理用を合わせて1人1日3リットルが目安です。

医療田:

1週間だと、1人21リットル。。

機械屋:

で、理由です。

実はこの要請、10月20日の大臣会見で、すでに予告されていました。

会見録を読むと、想定されているのは南海トラフ地震や首都直下地震などの巨大地震です。

その後、10月29日に大臣はXで、

「地震などの災害の予知情報が入っていることを契機とするものではありません」と説明しています。

10月30日の閣僚懇談会でも、件名は「事前防災徹底のための緊急要請」でした。

医療田:

じゃあ、サイバー攻撃の話は?

機械屋:

公式の説明には、サイバー攻撃もAIも出てきません。

ただ、ひとつ注意があります。

大臣が否定したのは「予知情報がきっかけ」という説で、「サイバーは関係ない」と明言したわけではないんです。

それに、要請の本文は11月2日に出るので、まだ誰も読めていません。

医療田:

なるほど、、

「公式の説明は自然災害向け。サイバーへの言及はない」、っていうのが、いま言える正確なところね。

機械屋:

そうです、そうです。

● 世界で同時に「3日分」 ―― 偶然なの?

医療田:

でもさ、イギリスでも同じ時期に「3日分備蓄して」って言い出したんでしょ?

世界で一斉に、ってなると、

本当に自然災害だけ?って思っちゃうんだけど。

機械屋:

その疑問は、自然だと思います。

英国は10月22日に、「Be Ready」というキャンペーンを始めました。

3日間の混乱に備えて、保存のきく食料と水を家に置いておこう、という呼びかけです。

報道によると、チェックリストには、硬貨と紙幣を混ぜた現金、電池式のラジオ、充電したモバイルバッテリー、紙に書いた連絡先や常用薬のリストも入っています。

医療田:

現金とラジオ、、

スマホが使えない前提なんだね。

機械屋:

はい。

政府の発表文が想定しているのは主に悪天候で、停電・断水・電話やネットの停止を挙げています。

一方で、担当閣僚のウェス・ストリーティング氏は、テレビ番組で、

「AIの時代には、従来の守りを押し破る脅威もある」という趣旨の発言をしています。

ただし、「特定の差し迫った事態を想定しているわけではない」とも述べています。

医療田:

イギリスは、AIにちょっと触れてるんだ。

機械屋:

ほかの国も見てみましょうか。

EUは2025年3月から「72時間分」を推奨しています。

スウェーデンは2024年11月に「1週間」、ドイツは2025年10月に「できれば10日」、オランダは今年10月12日に「72時間」です。

医療田:

あれ、、意外とバラバラだ。

機械屋:

そうなんです。

日本と英国が1〜2週間差で重なったのは事実ですが、

日本の要請は、英国より前の10月20日に予告されていて、日付は防災庁の発足日で決まっています。

医療田:

ふんふん。

機械屋:

ただ、欧州には共通の背景があります。

欧州の呼びかけは、もともと自然災害だけでなく、「ハイブリッド脅威」を理由に挙げているんです。

医療田:

はいぶりっど、、?

機械屋:

ハイブリッド脅威とは、武力そのものではなく、サイバー攻撃、インフラへの妨害、偽情報などを組み合わせて、社会を揺さぶるやり方のことです。

ロシアによるウクライナ侵攻以降、欧州では、これを正面から備蓄の理由として書いています。

医療田:

へえー!

機械屋:

はい。

日本が地震を前面に出すのは、南海トラフや首都直下という脅威が、それだけ現実的だからと読むのが素直だと思います。

医療田:

でも、日本政府が心の中でサイバーのことも考えてるかどうかは、、

機械屋:

外からは分かりません。

しかも、同じ週の10月26日には、首相官邸でサイバー攻撃をめぐる関係閣僚会議が開かれていて、

国家サイバー統括室が「攻撃にAIが使われている可能性が高い」という分析を示したと報じられています。

医療田:

えっ、、それ、同じ週?

機械屋:

はい。

ただ、こちらは別の会議で、担当も別です。

備蓄要請とつながっていると示すものはありません。

医療田:

あ、Vol.77の「状況証拠と確定診断」だ。

「無関係とは言い切れない」っていう感覚はあってもいいけど、

「本当の理由はサイバー」と書いたら、確定診断の出しすぎ、っていうことかな。

機械屋:

まさに、ですね^^

● 「Mythos級」は、もう来ているのか

医療田:

ちょっと待って。

政府が「AIが使われている可能性が高い」って言ったってことは、

Vol.77で話した、Mythos級の攻撃がついに始まったってこと?

機械屋:

いい質問です。整理しておきますね。

まずMythosの復習です。

Claude Mythos Previewは、4月にAnthropicが発表したAIで、ソフトウェアの未知の弱点を見つける能力が非常に高いため、一般公開を見送り、限られた企業にだけ提供されています。

医療田:

うん、Vol.52の号外の。

機械屋:

Vol.77では、AIエンジニア出身の参議院議員、安野貴博さんの見立てを紹介しました。

Mythos級に迫る能力を持つ中国のモデル「GLM-5.3」が8月に、オープンウェイトで公開されました。

オープンウェイトとは、AIの中身のデータまで公開され、誰でも手元で動かせる形のことです。

その安全装置を外した版が出回ったのは9月上旬から中旬とされ、

安野さんは、9月に公表された漏えいは、それ以前のAIによるものが多いだろう、

そして、Mythos級の能力を使った被害が表に出てくるのは、年末から来年の初めごろだろう、と見ていました。

医療田:

そうだった。

今のは前哨戦かもしれない、って話だったよね。

機械屋:

そこで、10月末の今の状況です。

政府は「AIが使われている可能性が高い」と分析しました。

ただ、それが「Mythos級のAI」だと示す公表情報は、今のところ見当たりません。

AIといっても、メール文面を作るものから、弱点を自動で探すものまで、レベルはいろいろですから。

医療田:

じゃあ、安野さんの見立てとも矛盾しないんだ。

「AIは使われているっぽい。でも、Mythos級の本番はまだこれから」。

機械屋:

はい。そう整理するのが、いちばん正確かと思います。

そして、もうひとつ見ておきたいのが、守る側のほうなんです。

医療田:

守る側?

機械屋:

Vol.89のPHPの件を覚えていますか?

医療田:

あ、出版社じゃないほうのPHP 笑

世界のWebサイトの約7割が使っている言語で、AIを使った研究者が重大な弱点を見つけた、っていう。

機械屋:

そうです^^

あのとき、10月21日に修正版が出る前後で、

銀行のネットバンキングや証券会社、鉄道会社、役所のサイトなどが、念のため一時停止しました。

医療田:

あ、、攻撃されたからじゃなくて、

守るために、自分から止めたんだ。

機械屋:

その通りです。

AIで弱点が見つかる速さが上がると、「見つかった → 急いで直す → その間は止める」が増えていきます。

そこにMythos級の攻撃が本格的に加わってくれば、なおさらです。

医療田:

攻撃されても止まる。守るためにも止まる。。

どっちにしても、ネットのサービスが数日使えない、ってことは起こりうるのね。

機械屋:

はい。

安野さんの見立てどおり、本番が年末から来年だとすれば、

備えるなら、今がちょうどいいタイミング、とも言えます。

医療田:

嵐の前に、雨戸を閉めておく、、ってことかな。

● 結局、何を備えればいいの?

医療田:

で、具体的には、何をすればいいの?

機械屋:

面白いことに、出発点は国ごとに違っても、行き着く品目はほとんど同じなんです。

日本は地震、欧州はハイブリッド脅威、英国は悪天候。

でも、電気・通信・お金の支払いが数日止まる、という「結果」は同じですから。

医療田:

原因じゃなくて、結果に備える、っていうことね。

機械屋:

そうです。

こういう、原因を問わない備え方を「オールハザード」と呼んだりします。

医療田:

じゃあ、今日まとめて買いに行ったほうがいい?

機械屋:

まずは、家にあるものを確かめるところからですね。

「3日分、できれば1週間分」は、家に備えておく総量の目安です。今ある分に加えて、その量を一度に買い足すという意味ではありません。

普段の買い物で、足りない分を少しずつ。食べたら補充する形なら、無理なく続けられます。

医療田:

なるほど、、買い込む前に、戸棚を見よう、だね。

機械屋:

そうです^^

紙に連絡先を書く、バッテリーを充電するなど、買い物をしなくてもできる備えもあります。

具体的には、こんなところでしょうか。

・水:1人1日3リットル。まず3日分、できれば1週間分

・食料:調理しなくても食べられるもの。普段食べるものを少し多めに買って回す「ローリングストック」で

・携帯トイレ:1人1日5回分程度。断水すると、まず困るのがトイレです

・現金:千円札と小銭。キャッシュレス決済やATMが止まったときのために

・電池式や手回しのラジオ:スマホが使えなくても、情報を得るために

・充電したモバイルバッテリー

・紙のメモ:家族の連絡先、常用薬の名前と量。お薬手帳も紙で

医療田:

紙、大事だね。

私、家族の電話番号、スマホがないと一人も言えないかも。。

機械屋:

多くの人がそうだと思います^^;

それから、AI時代ならではの備えもあります。

医療田:

AI時代ならでは?

機械屋:

ひとつ目は、AIに頼りきらない準備です。

地図も、翻訳も、調べものも、今はスマホとクラウドのAIに頼っていますよね。

停電や通信障害、それに守るための一時停止が起きると、それがまとめて使えなくなります。

医療田:

あ、、私、最近なんでもAIに聞いてるからなあ。

機械屋:

ふたつ目は、偽情報への備えです。

混乱したときほど、AIで作られた偽の画像や、偽の公式発表が広がりやすくなります。

SNSやAIの答えは、自治体や政府、NHKなどの公式の発表で確かめる。

今回の備蓄要請でも、「10月30日は家にいて」という根拠のないデマが広がりました。

医療田:

もう始まってるんだ、、

機械屋:

みっつ目は、Vol.77でもお話しした基本の3つです。

パスワードを使い回さない。

多要素認証を使う。多要素認証というのは、パスワードのような「知っているもの」に、スマホのような「持っているもの」での確認を組み合わせるログインの仕組みです。

そして、不審なメールやSMSに注意する。漏れた情報を使った、本物そっくりの連絡による二次被害が出ています。

医療田:

うん、、パスワード、Vol.77のあと、半分くらいは変えた。

機械屋:

半分、、

医療田:

半分でもえらいでしょ。

機械屋:

ははは。。残りも、ぜひ^^

● まとめ

機械屋:

今回の教訓をまとめましょうか:

・日本政府の備蓄要請(11月2日)は、防災庁の発足に合わせた「事前防災」が公式の説明。想定は南海トラフ地震などの自然災害で、サイバー攻撃への言及はない。ただし本文は11月2日公表

・各国の呼びかけの時期はバラバラ。欧州は「ハイブリッド脅威」(サイバー攻撃や偽情報などを組み合わせた揺さぶり)を公然と理由に挙げ、英国の閣僚はAIの脅威にも触れた

・同じ週、政府は「サイバー攻撃にAIが使われている可能性が高い」と分析。ただし、それがMythos級だと示す公表情報はない。被害の本格化は年末から来年という安野貴博さんの見立てとも矛盾しない

・AIで弱点の発見が速くなると、攻撃だけでなく「守るための一時停止」でもサービスが止まる

・原因が地震でもサイバー攻撃でも、「電気・通信・決済が数日止まる」という結果は同じ。水・食料・携帯トイレに加え、現金・ラジオ・モバイルバッテリー・紙のメモを

・AI時代の備えとして、AIに頼りきらない準備、公式情報での確認、パスワードと多要素認証の見直しを

医療田:

理由は国ごとに違っても、行き着く備えは同じ。

それに、AIの時代だからこそ、アナログの備えが効いてくるんだね。

機械屋:

はい。

Vol.77でお話しした「正当にこわがる」の、具体的な形かもしれません。

怖がりすぎず、怖がらなすぎず、3日分から始めましょう^^

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● よくある質問(FAQ)

Q. 政府の備蓄要請は、サイバー攻撃が理由なのですか?

A. 2026年10月31日時点の公式の説明では、防災庁の発足に合わせた「事前防災徹底のための緊急要請」とされ、想定は南海トラフ地震や首都直下地震などの自然災害です。サイバー攻撃への言及はありません。ただし要請の本文は11月2日に公表予定です。

Q. 何をどれくらい備蓄すればよいですか?

A. 食料・水・携帯トイレを最低3日分、できれば1週間分が目安です。水は1人1日3リットルです。これに加えて、少額の現金、電池式ラジオ、モバイルバッテリー、紙に書いた連絡先や常用薬のメモがあると、停電や通信障害、決済の停止にも備えられます。

Q. 英国やEUも同じような呼びかけをしているのですか?

A. はい。英国は2026年10月22日に「3日分」を呼びかけるキャンペーンを始め、EUは2025年3月から「72時間分」を推奨しています。時期は国ごとに異なり、欧州はサイバー攻撃や偽情報などの「ハイブリッド脅威」も理由に挙げています。

Q. AIとの関係は?

A. 政府は2026年10月、サイバー攻撃にAIが使われている可能性が高いと分析しました。また、AIで弱点が見つかる速さが上がり、修正のための一時停止が増えています。原因が何であれ、ネットのサービスが数日止まる事態に備えることが、AI時代のサイバー対策にもなります。

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●参考

内閣府 細野大臣記者会見要旨(2026年10月20日)

https://www.cao.go.jp/minister/2609_g_hosono/kaiken/20261020kaiken.html

復興庁 細野大臣記者会見録(2026年10月27日)

https://www.reconstruction.go.jp/topics/26/10/2026102815070210041.html

首相官邸 官房長官記者会見(2026年10月30日午前)

https://www.kantei.go.jp/jp/tyoukanpress/202610/30_a.html

J-CASTニュース「細野豪志防災担当相、防災『緊急要請』の理由を説明」(2026年10月30日)

https://www.j-cast.com/2026/10/30518815.html

GOV.UK「Households encouraged to take small, simple steps to stay prepared in an emergency」(2026年10月22日)

https://www.gov.uk/government/news/households-encouraged-to-take-small-simple-steps-to-stay-prepared-in-an-emergency

ITV News「Streeting urges public to be alert not alarmed amid call to stock up for a crisis」(2026年10月22日)

https://www.itv.com/news/2026-10-22/streeting-urges-public-be-alert-not-alarmed-amid-call-to-stock-up-for-a-crisis

欧州委員会「Preparedness Union Strategy」(2025年3月26日)

https://commission.europa.eu/document/download/526806b6-c4e1-43d1-81b7-947308efbab1_en?filename=Joint+Communication.pdf

Asia News Network(読売新聞)「Japan to finalise emergency measures for cyberattacks next week」(2026年10月28日)

https://asianews.network/?p=311145

【ゆる解説】Claude Mythos級のサイバー攻撃能力が拡散した? / 相次ぐ日本企業の情報漏洩との関係は?(安野貴博氏、YouTube)

https://www.youtube.com/watch?v=JhzjZwb4rjk

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https://note.com/41machida_ai/n/nc545b1f39ae9

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https://note.com/41machida_ai/n/n86dd5c9baec9

●2分で読める「生成AIのいま」シリーズ。バックナンバーはブログからどうぞ!

https://www.youichimachida-ai.com/blog

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町田洋一(医師・医学博士・経営管理学博士)

Youichi MACHIDA, MD, PhD, DBA

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