2分で読める生成AIのいま Vol.27 - 大規模言語モデルが解き明した人類思想の軌跡 -
- 人類の思想は、既存の思想の新たな融合から生まれてきた -
そんな壮大なテーマを、AIが解き明かしたというのです。
ちょっと難しい内容ですが、非常に興味惹かれる話題。
その研究の内容を、今回も医療田さんと機械屋さんの会話でわかりやすく解説します!
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1.研究内容の紹介
医療田:
あ、機械屋さん!
機械屋:
こんにちは、医療田さん。
医療田:
お疲れ様。
この前LINEで送ったリンク、見てくれた?
機械屋:
はい。拝見しましたよ。こちらですよね:
Charting trajectories of human thought using large language models (https://arxiv.org/pdf/2509.14455)
タイトルを意訳すると:
「人間の思考の軌跡を大規模言語モデル(LLM)で可視化する」
といった感じですかね。
医療田:
これ最初SNSで要約を見たとき、「脳の中での思考プロセスの話」なのかな?って思ったんだけど、、
機械屋:
そうじゃないですよね。
どちらかというと、LLMを使った「思想史」の研究なんですよ。
「一人の脳の思考プロセス」じゃなくて、「人類全体の知的な営みの軌跡」、なんです。
医療田:
うんうん。
機械屋:
この研究では、膨大な歴史的文章を、LLMが解析したんです。
「どんな主張が、どんな根拠から生まれ、どうつながっていったか」を、です。
すると、人類の思想って「まっすぐ進歩する一本の道」じゃなくて、分岐し、また収束して、新しい概念が生まれる森みたいなものだって見えてきたんです。
。。ちょっと難しいんですけど。
医療田:
ああ、大丈夫。私はついてきてるよ。
「LLMってそんなことわかっちゃうの?」って思ったよ。
LLMって文章生成ツールだと思っていたんだけど…違うんだね。
機械屋:
面白いですよね。
たとえば、
「ダーウィンの進化論は、生物学的観察と地質学、社会思想の交差点から生まれた」
と、この論文にはあります。
2.この論文の教訓 -"人類の知的発展の軌跡"と"AIを使った知的探求の可能性"-
医療田:
「ダーウィンの進化論」が「生物学的観察と地質学、社会思想の交差点から生まれた」ってことを、
LLMがどんなふうにして見極めたわけ?
あ、、わかりやすく説明して?
機械屋:
わかりました。
イメージとしては
「”大量の本や論文の山”をLLMに読ませて、その中の主張や根拠に対してラベリングをしていく」、
みたいな感じですかね。
つまりLLMに 「文章のこの部分は生物の観察」 「また別のこの部分は社会思想」みたいに。
で、それらのラベルを追跡すると、
「あ、このあたりで二つの理論が交差して、新しい理論=進化論ができあがったんだな」っていうのが見えたわけです。
医療田:
なるほど!
機械屋:
そういった点で、この論文ではLLMは、過去の文献の文脈を学際的に分析するという、非常に俯瞰的な役割を果たしたといえます。
これも、あらゆる分野に精通した、まさに”大規模言語”モデルならではのチカラワザですよね。
そしてその結果、人類の思想の進化は、
A→B→Cというような直線的なものではなく、
分岐しては収束するものであった、
ということが分かったわけです。
医療田:
んー。。。
つまり「人類の思想」って一本道の成長じゃなくて、
あっちへ分かれたり、また別の流れと合流したりして、森みたいに広がってきたんだね。
機械屋:
そうです。
そして面白いのは、新しい概念が生まれるのは、たいてい異なる流れが交差した場所なんですよ。
さきほどの進化論もそうでしたし、”情報理論も数学と通信工学の交差点から出てきた”、と。
医療田:
なるほど。
そう考えると、これからの革新的なアイデアも「分野と分野の交差点」にあるのかもしれないね。
機械屋:
まさにその通りです。
”イノベーション(技術革新)や発明が、完全な無から発生するということはない。
むしろすでにあるものとものとの新たな融合である”
というのはよく言われますけど、、
医療田:
そうだね、聞いたことある。
機械屋:
人類の知的発展そのものもまた、そのように行われてきた、というのはなかなか感動的ですよね。
この研究は過去を分析したものですが、同じ方法で「いま進行中の思想の流れ」をマップすれば、未来にどんな新しい理論が芽生えそうか、ヒントになるかもしれませんよ。
医療田:
たしかに。
それにしても、ChatGPTが出始めたころに、AIがこんな風な使われ方をするようになるなんて、思ってもみなかったな。。
機械屋:
おっしゃる通りですね。AIをどのように活用できるか、という点で、我々はまだまだ黎明期にいるんだと思います。これからも目を見張るような活用法が次々報告されていくでしょう。
その活用法を考えるうえでも、この論文はとても興味深い示唆を与えてくれますね。
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