2分で読める生成AIのいまVOl.24 - 文章作成だけではない?!「GPTによるタンパク質”合成”」の報告を読み解く -
「生成AIが、実は“生命のレシピ”にまで手を伸ばしている──」
そんな驚きの研究報告が発表されました。
OpenAIが開発した「GPT-4b micro」という特別なAIは、
文章ではなく“タンパク質”の並びを予測・提案することで、iPS細胞を作るための重要な因子を改良することに成功したのです。
「AIは文章を超えて、生命科学の未来をも描き始めている」──そんな可能性を感じますよね。
おなじみの医療田さん、機械屋さんの対話で、このニュースをわかりやすく解説します!
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機械屋:
医療田さん。こんにちは。
医療田:
あ、機械屋さん、こんにちは。今日もお疲れ様です。
…なに?なんかうれしそうな顔しているけど。
なんか、いいことでもあった?
機械屋:
あ、そうですか?
いや、いいこと、というか。
面白いニュースを医療田さんにお知らせしようと思って。
医療田:
そんなに…にやけるくらいのニュース?
機械屋:
ええ、、
「GPT-4b」ってご存じですか?医療田さん。
医療田:
最近なかったけど…ねえ、
たまにバカにしてくるよね。
GPT-4oでしょ?知ってるよ。ChatGPTの前の世代のモデル、でしょ?
機械屋:
いや、医療田さん。ちがうんですよ。GPT-4b、"b"です。
医療田:
・・・ん?ビー?
機械屋:
そうです、GPT-4b。
タンパク質工学に特化したGPT-4oの小型版、なんです。
1.GPT-4bによる「山中因子の改良」
医療田:
タンパク質工学?
機械屋:
医療田さん、「山中因子」ってありますよね。
医療田:
あ、まあ、いちおうわたしも医者だからね?
えっとあれでしょ?
iPS細胞を作るのに必要な、、タンパク質でしょ?
機械屋:
その通りです。OCT4、SOX2、KLF4、MYC、この4つのタンパク質を山中因子といって、
細胞を初期化して、また何にでもなれる状態=iPS細胞に戻すスイッチみたいな存在ですね。
医療田:
そうそう、それそれ。
機械屋:
ただしいくつか問題があります。
その一つは、効率がものすごく低いこと。
普通は0.1%未満の細胞しか変化しないし、3週間以上もかかるんです。
医療田:
1000個にひとつか。。なんか3週間もかけて効率悪すぎるね。
機械屋:
そこでです。
GPT-4bは、この山中因子のアミノ酸配列を改良して「効率の良いバージョン」を提案したんです。
実験では、AIの提案に従ってSOX2やKLF4の改良版を研究チームが実際に作って試したところ、成功率が、0.1%未満から30〜50%に跳ね上がりました。
しかも変化のスピードも速く、10日以内にiPS細胞のマーカーが現れたそうです。
医療田:
0.1%が数十%に!?
機械屋:
桁が違いますよね。驚きの改善率です。
2.そもそもタンパク合成はどうやって行うのか?GPT-4bの役割とは?
医療田:
でも…AIが「提案」?
AIが直接タンパク質を「作る」ってわけじゃないんでしょ?
そもそもさ、GPTの“T”ってTransformerのことでしょ?
Transformerって、、もともとは「次の言葉」を高い精度で予測するAI。だったよね。
それがなんで、タンパク質の設計に使えるの?
機械屋:
そこが面白いところなんです。
実は「文章の単語の並び」と「タンパク質のアミノ酸の並び」って、ある意味ではよく似ているんですよ。
医療田:
え、文章とタンパク質が似てる?
機械屋:
文章は「単語の"順番"」が大事ですよね。
タンパク質も「アミノ酸の"順番"」が生命活動を決めるでしょう?
医療田:
おお、そうだった、
AとTとCとG、"アデニン"、"チミン"、"シトシン"、"グアニン"、4つの塩基がDNAを作るんだよね。
タンパク質は20種類のアミノ酸の組み合わせでできてるけど、どちらもこの“4つの塩基”からパスワードみたいに、アミノ酸に翻訳されるんだった。
あ、なるほど、、
アミノ酸の並びを“単語の並び”に見立てれば、確かに似てるかも…!
機械屋:
そのとおりです!
そして、AIはあくまで「設計図=アミノ酸配列」を出すだけです。
実際にタンパク質を作るのは、研究者と細胞、です。
流れを整理すると ————
1) DNAに書き換える
AIの提案したアミノ酸配列を、対応するDNA情報に変換して人工的に合成します。
2) 細胞に入れる
(ウイルスベクターやmRNAなどの方法で)そのDNAをヒトの細胞に導入します。
3) 細胞に作らせる
細胞がDNAの指示通りにタンパク質を合成します。
4) 実験で確かめる
そのタンパク質を実際に使って、iPS細胞ができるか?DNA修復力は上がるか?などを確認する。
———— という具合ですね。
3.今後の生成AIによるタンパク合成の可能性について
医療田:
へー!
今後が楽しみだねえ。
機械屋:
そうですね、GPTなどの生成AIが引き起こす、再生医療の革命の可能性がいよいよ現実的になった感があります。
iPS細胞の効率を劇的に改善できるので、老化細胞の若返りや臓器再生にも直結するかもしれません。
実際にこの研究では、「γ-H2AXシグナル低下 → RetroSOX/KLFでDNA修復がより効果的」と、DNA損傷の修復力が高まったことも示されています。
つまり、病気の治療だけでなく、アンチエイジングや臓器不足の解決にもつながる、といえるのではないでしょうか。
OpenAIのボリス・パワー氏も「深い専門知識を持つ研究者と、私たちのモデルを組み合わせれば、数年かかる問題が数日で解けるようになる」とコメントしています。もちろんiPS細胞や山中因子自体の持つ限界点もいくつかありますが、これも含めた将来の可能性には期待が持てますね。
医療田:
AIと研究者が一緒に進む未来か…。
なるほど。。
ふふ、これはにやけたくもなるニュースだね。
機械屋:
ふふ、そうでしょ?
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● OpenAIによる報告原文はこちら(英文):
https://openai.com/.../accelerating-life-sciences.../
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